野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
ガラツ八の八五郎が、兩國の水茶屋朝野屋の樣子を、三日續けて見張つて居りました。
「近頃變なのがウロウロして、何を仕掛けられるか氣味が惡くて叶はないから御用のひまなとき、八五郎親分でも時々覗かして下さいな――」
朝野屋の名物娘お秀が、人に反對や遠慮をさせたことのない、壓倒的な調子でかう平次に頼んで行つてからのことでした。
野村 胡堂
一
ガラツ八の八五郎が、兩國の水茶屋朝野屋の樣子を、三日續けて見張つて居りました。
「近頃變なのがウロウロして、何を仕掛けられるか氣味が惡くて叶はないから御用のひまなとき、八五郎親分でも時々覗かして下さいな――」
朝野屋の名物娘お秀が、人に反對や遠慮をさせたことのない、壓倒的な調子でかう平次に頼んで行つてからのことでした。