野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、あれを御存じですかえ」

ガラツ八の八五郎はいきなり飛び込んで來ると、きつかけも脈絡もなく、こんなことを言ふのでした。

「あ、知つてるとも。八五郎が近頃兩國の水茶屋に入り侵つて、お茶ばかり飮んで腹を下してゐることまで見通しだよ。どうだ驚いたらう」

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