野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「八、丁度宜いところだ。實は今お前を呼びにやらうかと思つてゐたところよ」

「へエ、何んか御馳走でもありますかえ」

錢形平次は、斯んな調子で八五郎を迎へました。この頃の暑さで、江戸の惡者共も大怠業をきめて居るらしく、珍らしく御用の方も閑だつたのです。

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