野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「考へて見ると不思議なものぢやありませんか。ね、親分」
八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのでした。明神下の錢形平次の家の晝下がり、煎餅のお盆を空つぽにして、豆板を三四枚平らげて、出殼しの茶を二た土瓶あけて、さてと言つた調子で話を始めるのです。
「全く不思議だよ。晝飯が濟んだばかりの腹へ、よくもさう雜物が入つたものだと思ふと、俺は不思議でたまらねえ」
野村 胡堂
一
「考へて見ると不思議なものぢやありませんか。ね、親分」
八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのでした。明神下の錢形平次の家の晝下がり、煎餅のお盆を空つぽにして、豆板を三四枚平らげて、出殼しの茶を二た土瓶あけて、さてと言つた調子で話を始めるのです。
「全く不思議だよ。晝飯が濟んだばかりの腹へ、よくもさう雜物が入つたものだと思ふと、俺は不思議でたまらねえ」