野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

江戸八百八丁が、たつた四半刻のうちに洗ひ流されるのではあるまいか――と思ふほどの大夕立でした。

「わツ、たまらねえ。何處かかう小鬢のあたりが焦げちやゐませんか、見て下さいよ」

一陣の腥さい風と一緒に、飛沫をあげて八五郎が飛び込んで來たのです。

青空文庫の作品カード