野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「ね、お前さん」
女房のお靜は、いつにもなく、突きつめた顏をして、茶の間に入つて來るのでした。梅二月のある日、南陽が一パイに射す椽側に、平次は日向煙草の煙の棚引く中に、相變らず八五郎と、腹にもたまらない無駄話の一刻を過して居るのでした。
「恐ろしく眞劍な顏をするぢやないか。また俺の湯呑でも割つたんだらう」
野村 胡堂
一
「ね、お前さん」
女房のお靜は、いつにもなく、突きつめた顏をして、茶の間に入つて來るのでした。梅二月のある日、南陽が一パイに射す椽側に、平次は日向煙草の煙の棚引く中に、相變らず八五郎と、腹にもたまらない無駄話の一刻を過して居るのでした。
「恐ろしく眞劍な顏をするぢやないか。また俺の湯呑でも割つたんだらう」