野村 胡堂

芸術としての探偵小説

捕物作家である私は探偵小説のファンとしての立場から、探偵小説に対する私見を述べてみたいと思う。

探偵小説も芸術である以上――私はそういう前提のもとに話をすすめる――殺人のトリックだけに溺れ、人間性を描くことを忘れ、徒らに技巧のみに走ることは探偵小説にとってまことに危険なことと云わねばならない。

私が、今後の探偵小説に望みたいことは次の三点に要約される。

一、技巧に溺れないザングリした、しかも芸術的に高度なもの。

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