井上 準之助
金解禁前後の経済事情
金解禁前後の經濟事情に就て
我國に於て大正六年九月十二日に金の輸出禁止を實行して以來十三年の間金の輸出禁止が日本の經濟界に與へた惡影響は可なり大なるものであつて、此の間金解禁の計畫をしたのは一再に止まらなかつたが、種々の事情の爲めに其の實現が出來なかつた。然るに昨年十一月二十一日に、今年一月十一日に於て金解禁を決行することに決定發表し得たことは我國經濟の爲に非常な仕合せである。日本に取つては大正六年以來の問題、又之を世界から見ると、世界何れの國と雖も金解禁は已に決行されて居つて只日本だけが取殘されて居るからして、何時日本は金の解禁をするか、日本の金解禁は如何なる用意を以てするかは可なり注目されて居る爲に、金解禁は國の内外に於て大問題であつたのである。從て金解禁に對する諸般の準備、解禁の出來た事情、解禁の經濟界に與ふる影響、解禁後の國民の覺悟に就て廣く國民の理解を得置くことは將來の金本位制維持の爲め最も必要の事項と考ふる處である。
金解禁に對する準備
財政の整理緊縮日本の財政は世界戰爭による我國經濟界の膨脹に連れて非常な膨脹をしたのであるが、其の膨脹した經濟界は戰後間もなく變動を來して大に縮少したにも拘らず、財政は尚ほ整理が出來ずに居つた。又日木の經濟界も同樣であつて、世界戰爭の爲に輸出超過、正貨の流入、通貨膨脹物價騰貴で日本の經濟界は急激に大膨脹を來したが、戰爭が濟むと其の翌年から再び輸入超過に變じ經濟界の状勢は一變したるに拘らず戰後十數年を經た今日に於ても更に改善の曙光を認むることを得ざる状態にある。これは勿論大正六年九月十二日以來實行せられたる金の輸出禁止が解除せられず從て