北大路 魯山人

序に代えて

私たちが料理をとやかく言ったり、美味い不味いを口にしますと、ぜいたくを言っているように聞えて困るのですが、私が言うのはそうじゃないのです。

料理の考え方ひとつで、仕方ひとつで、物を生かして美味しくいただける工夫、すなわち経済で美味……それです。心なしの業で物を殺してしまっていることが往々にありますが、それをもったいないと言うのです。よいものをわるいものにして食べている事実を見るたびにそう思います。

よい材料を殺して、つまらないものにしてしまうのは、第一、造物主に対して、済まぬことであり、罰が当るでしょう。自分としても損失であり、恵まれないことでもあります。

金の使い方の上手下手などの話は、よく人の評に上ることですが、大根一本、魚一尾も道理に変りありません。用い方の上手下手ひとつでたいへんな相違と開きが生じます。これが上手に行きますと、たいへん美味い料理となって、しかも経済でありながら、人をよろこばせますし、無知と不精で下手なことをしますと、価値の少ない、もったいないものになります。これが結果は、前者は有能であり、後者は無能でありましょう。

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