北大路 魯山人

塩鮭・塩鱒の茶漬け

さけとますとは、素人目には一見似たものではあるが、味から言えば、さけよりますの方がはるかに優る。

さけは淡塩があり、またやわらかいものがある。東京では、これらの中から自由に選択することができる。この中でさけの一番美味いのは、新巻と称するものである。新巻などの場合は、焼いたものを茶漬けにして食べるべきである。番茶ではちょっと不味いが、煎茶をかけての塩じゃけの美味さはお茶漬け中の逸品で、雑念をはらって没頭できるほどの味を持っている。さけの茶漬けは、まぐろやてんぷらのように、飯の上に載せて茶をかけぬ方がいいようである。

ますにも淡塩、濃塩など、いろいろあるようではあるが、一見みすぼらしい板のようになった薄っぺらなほうが茶漬けには適する。これらはいかなる寒村僻地にも行き渡っている品で、一尾百円か、大きくても二百円くらいのものであろう。鉄錆を見るように真っ赤になった塩ます、これがますの中でも一番美味いようである。さて、この濃塩の板のようになっているますの肉をむしり取って、御飯の上にのせる。この際、忘れてならないことは、皮もいっしょに御飯の上にのせて、その上からあついあついお茶をかけることである。

元来、塩からいますのことであるから、この茶漬けには、塩をかける必要も生醤油をかける必要もない。ます自身の塩加減で充分である。さけは御飯の上に載せてお茶を注いでもあまり美味い汁は出ないが、ますの方は、とても美味しい汁が出る。

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