北大路 魯山人

納豆の茶漬け

納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明したものではないが、世上これを知らないのはふしぎである。

納豆の拵え方

 ここでいう納豆の拵え方とは、ねり方のことである。このねり方がまずいと、納豆の味が出ない。納豆を器に出して、それになにも加えないで、そのまま、二本の箸でよくねりまぜる。そうすると、納豆の糸が多くなる。蓮から出る糸のようなものがふえて来て、かたくて練りにくくなって来る。この糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである。

かたく練り上げたら、醤油を数滴落としてまた練るのである。また醤油数滴を落として練る。要するにほんの少しずつ醤油をかけては、ねることを繰り返し、糸のすがたがなくなってどろどろになった納豆に、辛子を入れてよく攪拌する。この時、好みによって薬味(ねぎのみじん切り)を少量混和すると、一段と味が強くなって美味い。茶漬けであってもなくても、納豆はこうして食べるべきものである。

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