小川 未明
薬売りの少年
荷物を背中に負って、薬売りの少年は、今日も知らぬ他国の道を歩いていました。北の町から出た行商群の一人であったのです。
霜解けのした道は、ぬかるみのところもあるが、もう日の光に乾いて、陽炎の上っているところもありました。村はずれに土手があって、大きな木が立っていました。かさのように枝を空へ拡げていました。
「なんの木だろうな。」
少年は、よくこうした景色を見るのです。ゆくところ、どこにも同じような村があり、人が住んで、笑ったり、怒ったりしていると思うと、なんとなくこのあたりの風景を見てもなつかしいのでした。そしてここにはもう春がきていて、木の下には、青い草が芽ぐみ、紫色のすみれの花さえ咲いているのが、目の中に入ったのです。