北大路 魯山人
魯山人家蔵百選 序
私が鎌倉の山崎に窯を築き、製陶の事に懸命に係り出してからといふものは、勢の赴くところとでも云はうか、参考品としての古陶磁の蒐集が余儀なく一箇の大事になつた。
これは私が製陶上の狙ひを、一に古陶磁の本領に向つて定めて行つたといふ事が、事を左様にはげしくした。そして今日に於ては所集の陶品、数千点を数へやうとしてゐるのである。
私が此参考品を集めるに当つての標準は、凡そ三百年以前の物と云ふ事を理想とし少しでも参考になりさうなものであれば、完器と不完器とを問はず、又損傷の有無を論ぜず、中華、朝鮮、日本その他に亘り、浅くとも殆どその一通りは手を届かせたつもりである。
かくて見つつ作り、作りつつ見てゐる間に、いつとはなしにそこに何やら手ごたへを感ずるものがないではない、と云ふよりも寧ろ教はる処が真に尠くなかつた。