下村 海南
小島の春
トラツクのふちにつかまりすすり上げすすり上げ泣く四十の男
これやこの夫と妻子の一生の別れかと想へば我も泣かるる
夫と妻が親とその子が生き別る悲しき病世に無からしめ
一等国中の一等国である日本には、まだ癩の患者が至るところに、医療の手当にも恵まれずに散らかっている。欧米各国では患者の全部が隔離され収容され、それぞれに手当をうけて余生を送っている。そうした患者が相ついで天命を終った時に、その国には癩が絶滅されるのである。日本ではまだ万余を数える伝染病毒を持つ不幸なる患者が野放しになっているのである。