高野 六郎

小島の春

小川さんは完全な癩療養所の先生であると私は信じている。完全な者はそう幾人もない。小川さんは日本における稀有な存在である。

小川さんは心魂を捧げつくして癩事業に精進する。小川さんの「土佐の秋」や「小島の春」を読んで圧迫を感じない者はなかろう。

「誰にでも、一人でも、療養所を、癩を諒解して貰いたい心願に燃えて」小川さんは土佐の山奥や瀬戸の小島を心身を消耗させながら縦横無尽に歩き廻る。講演もする。説得もする、文章も書くし歌も作る。出来ない事は自転車に乗ること位らしい。その自転車へも荷物台へ身軽にまたがって山路を運んで貰うことを心得ている。

小川さんに欠けているのは健康だけである。否、その健康もかつては十分にあったのである。健康であったればこそ土佐の旅もその他僻地の検診もできたのである。折角持っていた健康を自分でたたき潰すほどに猛烈に働こうとする意志と感情の激しさが小川さんの欠点なのである。

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