正宗 白鳥
母と子
封筒の中には長いお札が疊み込まれてあつた。それには××八幡宮玉串と大きな文字が刷られて、その傍に「辰の歳の男疳性平癒」と書いてあつた。
何事を云つて來たのかと、案じながら手紙を開いたおたねは、お札を見るとくす/\獨り笑ひをした。お札の外に御供米が四五粒包まれてゐた。
明ら樣に云つては夫が一口に迷信だとけなして生米なんか口に入れないだらうからと、おたねは御飯の中へそつと落して食べさせることにした。そして、知らずに食べてゐる夫の顏を見守つて、ひそかに面白がつてゐたが、やがて笑ひを忍びかねた。
「お國のお母さんが贈つて下すつたものをあなたは今召し上つたんですよ。」と、些つと揶揄氣味で云つた。