山之口 貘

チャンプルー

このごろの泡盛屋では、琉球料理を食べさせるようになったので琉球出身のぼくなどにとっては何よりである。戦前の泡盛屋では、泡盛だけが琉球で、つまみものなどはほかの飯屋と変わらなかったが、いまは簡単な琉球料理があって、琉球的な雰囲気が濃厚である。

こころみに、ある泡盛屋ののれんをくぐると、ミミガーとか、アシティビチとかチャンプルーとかいうのが、眼につくわけである。むろん初めての客には、見当のつかない料理名なのである。折角、泡盛をついでもらっても、さて、つまみものとなると、さっぱりわからないので、結局、「ミミガーってのはなんだい」ときいてみるより外には手がないのである。

ミミガーは、一般家庭ではあまり食べなかった。沖縄では辻町の料理屋あたりでは、酒の肴としていつでも食べられたのである。ミミガーは、一口に云えば豚の耳の料理である。食べたことのない人は、耳ときいただけで、そっぽを向いたりするものもあるが、まず、食べてみることが肝心なのである。

その証こには、ミミガーを食べさせる泡盛屋に来て、それを食べないものは、まずないといってもよいからなのである。よくゆでた耳を、うすくきざんで、大根おろしといっしょに三杯酢にしたものである。こりこりして、なかなかさっぱりしたものである。

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