ベルトラン ルイ

欝金草売

花のなかなる欝金草は鳥のなかなる孔雀の如し。かれに香無くこれに歌無し。かれは其袍を、これは其尾を矜る。   「珍華園」

あたりはしんとしてゐる。博士ホイルテンの指の下に羊皮紙の擦れる音ばかりだ。博士は彩色の飾文字を散らした聖典を見つめてゐて、たまに眼を放てば、うつすり曇る水盤の中に泳ぐ二尾の魚の金と紅とを眺めるのみだ。

部屋の扉がすうつと開いた。花屋は欝金草の鉢をいくつも抱へて會釋しながら博學の君の讀書を妨げて眞に相濟まずといふ。

――先生、御覽下さいまし、逸品も逸品、珍の珍とも申したいこの一株の球根は東羅馬皇帝の後宮にも百年に一度しか咲かぬ花の種で御座います。

青空文庫の作品カード