前田 普羅

普羅句集

序

説明するまでもなく、此の句集を繙かれる時、一句一句に就て私の生活が見出される事であらう。

今日までの私の俳句生活は二つに分たれる、富山移住前と富山移住後とに。富山移住前の生活は横浜に於ける生活である。何故に其れを横浜時代と云はないか。私の俳句生活その他にも重大なる転機を与へた富山移住を記念するために、しばらく横浜時代の文字を割愛し、心に秘めて愛して居ようと思ふから。

富山移住前の句は上巻に収めた。下巻は必然的に富山移住後の句が集められて居る。上巻を見ると、世路の術にも、心の鍛錬にも幼かつた私の狂はしき姿を見る、と云つて、下巻には、世路の術心の鍛錬に行き届いた時代の句が収められたと云ふのではない。只、静かに静かに、心ゆくまゝに、降りかゝる大自然の力に身を打ちつけて得た句があると云ふのみである。句を誇るのでなく、心を曝らけ出すのに過ぎない。物ほしさうな世路の術と云ふ事も、心の鍛錬なぞと修道者めいた言葉も忘れ果てた境に生れた句を収めたのみである。

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