今野 大力

郷土

1草深い放牧地よ 北海の高原に群がれる人々を養える郷土よ 北海道よ 未開地よここには名もなき小花も咲くであろう未だ人手に触れない谷間の姫百合も咲くであろう春ともなれば黄金の福寿草も咲くであろうかくてアイヌ古典の物語も想い出されるであろう2おお郷土の人々よ昔は 卿等が渡道の頃は 何処にも熊は住んでいた時として卿等よ 憶い起してはならないあの殺伐な熊狩のあたりのことを又若き人々よあまりに華やかさを粧うてはならない卿等の親達は あの幾千年以前から住みなれた故郷を捨てて 一意に 荒野の生活に憧憬れて来たのだからここでは凡てが自然の素朴であらねばならない煤びたセピア色もて彩られた家は最も卿等の住家であらねばならない

おお郷土の人々よ卿等は自然の人である卿等は自然の法による敢て立法博士を要しない自然は最も自由な さて正確な立法者である土に生れて 土に還る それは真に意義ある生命の時である 卿等のかばねは 卿等のけものは 卿等の小花は

ああ 自然の不滅にあらぬものは すべて朽ち果てて豊沃なる土となるかくて永遠に還りゆく……3日本否世界の 神秘派の 古典派の人々よ此処には珍らしいものがある木の皮の織物 余韻の歌謡 雑木の彫刻 それら皆露わなままに 虐げられたアイヌ人種の生み成せる まことに尊い芸術である我等はシャモ(一)は これ等見なれて尚飽くなきものの為めには あらゆる讃美の言葉を惜しまない。4ああ オオツク海よ 太平洋よ氷山流れて港をうずむる 融雪のころ白熊のうそぶく千島の彼方は アラスカの洲 北極の圏 永遠の冬我等の郷土はここにある。

(一)アイヌが言う日本人のこと

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