堀 辰雄
ルウベンスの偽画
それは漆黒の自動車であつた。
その自動車が輕井澤ステエシヨンの表口まで來て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。
彼はそれがあんまり美しい車だつたのでタクシイではあるまいと思つたが、娘がおりるとき何か運轉手にちらと渡すのを見たので、彼は黄いろい帽子をかぶつた娘とすれちがひながら、自動車の方へ歩いて行つた。
「町へ行つてくれたまへ」
堀 辰雄
それは漆黒の自動車であつた。
その自動車が輕井澤ステエシヨンの表口まで來て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。
彼はそれがあんまり美しい車だつたのでタクシイではあるまいと思つたが、娘がおりるとき何か運轉手にちらと渡すのを見たので、彼は黄いろい帽子をかぶつた娘とすれちがひながら、自動車の方へ歩いて行つた。
「町へ行つてくれたまへ」