ボードレール シャルル・ピエール
ANY WHERE OUT OF THE WORLD
人生は一つの病院である。そこに居る患者はみんな寝台を換へようと夢中になつてゐる。或るものはどうせ苦しむにしても、せめて煖爐の側でと思つてゐる。また或るものは窓際へ行けばきつとよくなると信じてゐる。
私はどこか他の処へ行つたらいつも幸福でゐられさうな気がする。この転居の問題こそ、私が年中自分の魂と談し合つて居る問題の一つなのである。
「ねえ、私の魂さん、可哀さうな、かじかんだ魂さん、リスボンに住んだらどうだと思ふね? あそこはきつと暖かいからお前は蜥蜴みたやうに元気になるよ。あの町は海岸で、家は大理石造りださうだ。それからあの町の人は植物が大嫌ひで、木はみんな引き抜いてしまふさうだ。あすこへ行けば、お前のお好みの景色があるよ、光と鉱物で出来上つた景色だ、それが映る水もあるしね。」
私の魂は答へない。