野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

錢形平次が關係した捕物の中にも、こんなに用意周到で、冷酷無慙なのは類のないことでした。

元鳥越の大地主、丸屋源吉の女房、お雪といふのが毒死したといふ訴へのあつたのは、ある秋の日の夕方、係り同心漆戸忠内の指圖で、平次と八五郎が飛んで行つたのは、その日も暮れて街へはもう灯の入る時分でした。

「へエー、御苦勞樣で――」

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