今野 大力
軍服を着た百姓源造の除隊
「おお源造よ 帰って来たか」つまごをはき、雪路を踏んで、馬橇の上で別れて行ったあの日、「俺あクジ逃れだ、俺には只一人のお母がいる、お母はおいぼれ……」「でも源造よ、お上はお前や俺等のために、どうにもなんめいぞ、誰ぞと代って下されと、あれ程ねがったんだに 仕方のねい世の中だ 諦められない世の中よ そんだば、元気で行ってこう 源造よ、元気でだぞお!」
戦争におびやかされ戦争は明日にもあるらしい『戦争が初まったら……』将校は勲章をかぞえ、拍車を磨き、サーベルをさすっていたそして精神講話に武士道の物語りをのべた。支那が戦場の夢に出て、ロシアが理屈で出しゃばり出す、地図のアジアは将校の馬蹄にじゅうりんされ夢将校の栄誉は未来永劫。
二年目に帰ってきた源造、帰れば部落は積雪の下霜枯れた草木の眠れる山野雪路を踏み、馬橇の上、「おお源造、お前は上等兵かよ」「ええ俺あ二等卒だよ」
血書血判で兵隊になりたい奴もある世の中、(不景気だからな 兵隊になりゃ喰うだけ喰えるからよ)