佐々木 味津三
右門捕物帖
1
――今回は第十三番てがらです。
それがまた妙なもので、あとを引くと申しますのか、それともこういうのがまえの世からの約束ごととでも申しますのか、この十三番てがらにおいて、ひきつづき、またまたあのあばたの敬四郎がおちょっかいを出して、がらにもなく右門とさや当てをすることになりましたから、まことに捕物名人としては、こうるさい同僚をかたき役に持ったというべきですが、事の端を発しましたのは、二月もずっと押しつまって、二十八日の朝でした。
しばしば申しますとおり、二月は二月であっても旧暦の二月なんだから、もう少しはぽかぽかしてもいっこうに不思議はないはずですが、それにしてもちょっと狂い陽気で、おまけに朝からしとしとと、絹糸のような小ぬか雨です。いきにいえば、忍び音の糸もみだるる春の雨――というあの雨なのですが、あいきょう者の伝六は来ず、たずねていくべき四畳半はなし、せっかくいきな春雨が降るのに、寝ころがってあごばかりまさぐっていても芸のない話だと思いつきましたものでしたから、ふと右門の気がついたところは、このごろ席を始めたという向こう横町の碁会席でありました。