宮島 資夫

四谷、赤坂

高力松

いかつい石垣が向い合って立っていた。子供の目には恐ろしく高く見える。石垣の上は四角く平らになっていた。昔はぶっさき袴の侍がその上に立って、四辺を睥睨したであろう。石垣に続いた土手は、ゆるい傾斜で、濠の水面まですべっていた。水は青いぬらで澱んでいた。菱の葉が浮いていた。夏は紅白の蓮の花が咲いた。土手には草が蓬々と茂っていた。が、濠端を通る人影はまばらだった。日影の尠い、白ちゃけた道が、森閑として寂しく光った。葭簀張の店もなかった。『氷やこ――り、こ――り』今は全くなくなった、呼び売の氷屋の声が、時たまあたりに響く位だ。

冬は勿論、人通りは尠くなった。街灯もなかった。月のない晩は凄いほど暗かった。ただ、見附のワキに出る煮込み吸とんの屋台の光が、漸くほっと息をつかせる位だった。

それが私の子供時分の四谷見附だったのである。荒廃してはいたが、江戸城外廓の趣は残っていた。

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