野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、美い新造が是非逢はしてくれつて、來ましたぜ」

とガラツ八の八五郎、薄寒い縁にしやがんで、柄にもなく、お月樣の出などを眺めてゐる錢形の平次に聲を掛けました。

平次はこの時三十になつたばかり。江戸中に響いた捕物の名人ですが、女の一人客が訪ねて來るのは、少し擽ぐつたく見えるやうな好い男でもあつたのです。

青空文庫の作品カード