野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
ガラツ八の八五郎が、その晩聟入をすることになりました。
祝言の相手は金澤町の酒屋で、この邊では有福の聞えのある多賀屋勘兵衞。嫁はその一粒種で、浮氣つぽいが、綺麗さでは評判の高いお福といふ十九の娘、――これが本當の祝言だと、ガラツ八は十手捕繩を返上して、大店の聟養子に納まるところですが、殘念乍らそんなうまいわけには行きません。
實際のところは、その晩聟入りの行列などを組んで歩いたら、命を奪られるかも知れないといふ、――眞實の聟、仲屋の伜錦太郎に頼まれて、いや/\乍らガラツ八は、聟入の贋物になることを引受けさせられてしまつたのです。