野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

錢形平次は久し振りに田舍祭を見物に出かけました。

調布街道を入つた狛江村、昔から高麗人の裔が傳へた、秋祭の傅統がその頃まで殘つて居て、江戸では見られぬ異國的な盛大さが觀物だつたのです。

宿は北見の三五郎、義理堅い良い目明しでした。この邊は伊奈半左衞門の支配で、江戸の眞ん中と違つて、事件は少ないやうです。が、人間と人間の關係がうるさいので、實際斯う言つた顏の良い親分衆でないと、十手捕繩を預つての、キビキビした活動はむづかしかつたのです。

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