野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「へツへツ、へツへツ、隨分間拔けな話ぢやありませんか」

ガラツ八の八五郎が、たがが外れたやうに笑ひながら、明神下の平次の家に笑ひ込むのです。

世間はまだ松が取れたばかり、屠蘇の香りがプンプンとして居やうといふ時ですから、笑ひながら來る分には、腹も立ちませんが、それにしても、かう不遠慮にやられては、御近所の衆が膽をつぶします。

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