中原 中也

新短歌に就いて

新短歌に就いて論ずることは、非常に困難なことに思はれる。すべて芸術上の新様式の発生期に当つてその新様式を是非することは、予想外の困難を伴ふことだし、大概の場合正鵠を射当てることはない。そんなわけで私は今どんな断定的な態度をもとることは出来ない。私は此の新生児を抱いて、七転八倒してみるだけのことである。

扨新短歌は、既に新しい様式として存在してゐるか? 或ひは存在するに到りさうであるか?

その成績を今問はないこととするならば、新短歌は、どうやら詩歌の新しい様式として、既に存在してゐるやうに思はれる。これが短歌より出て来たものだとしても、既に短歌と訣別して、新しい領土に立つてゐることも恐らく間違ひない。然し、私はさう思ふと同時に、多くの躊躇をも感ずるものだ。そこで問題を、他の側から考へてみる。

新短歌が、短歌から出て来たものと考ふべきか、全然別個に発生したものと考ふべきかは甚だ疑問であるけれども、短歌にもはや発展の余地がないと思つた人々によつて工夫されたものであることは慥かである。

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