野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分の前だが、江戸といふところは、面白いところですね」
松もまだ取れないのに、ガラツ八の八五郎はもう、江戸の新聞種を仕入れて來た樣子です。長んがい顎を撫で廻して、小鼻をふくらませて、滿面の得意が、鼻の先にブラ下がつてゐる樣子でした。
「面白いに違げえねえな、お互ひに江戸に生れて江戸に住んで、大した退屈もせずに、また年を一つ取つたぢやないか」
野村 胡堂
一
「親分の前だが、江戸といふところは、面白いところですね」
松もまだ取れないのに、ガラツ八の八五郎はもう、江戸の新聞種を仕入れて來た樣子です。長んがい顎を撫で廻して、小鼻をふくらませて、滿面の得意が、鼻の先にブラ下がつてゐる樣子でした。
「面白いに違げえねえな、お互ひに江戸に生れて江戸に住んで、大した退屈もせずに、また年を一つ取つたぢやないか」