佐々木 邦

好人物

子供のない家庭

「安子や、一寸見ておくれ」

と千吉君は家へ帰って和服に着替えると直ぐに細君を呼んだ。出入り送り迎えは欠かさないが、着替えの手伝いまでしてくれる時代はもう疾うに過ぎ去っている。結婚して六七年になれば細君も良人を理解する。この人ならこれぐらいで沢山と略※(二の字点、1-2-22)見当がついて、待遇が自ら定って来る。但し粗末にするという意味では決してない。自分の都合の好い折丈け勤めて置く。気の向いた時には特に念を入れて、

「まあ、ひどい埃だこと!」

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