佐々木 邦

小問題大問題

津島君の子爵病は長いことだった。一杯やると発作的に催す。遠く王政維新廃藩置県の頃に溯って、

「祖父がその時好機会を逸しなかったら、僕も今頃は子爵の御前様で納まり返っていられるのになあ」

と口惜しがるのを常とした。生れてもいない昔のことを今更何と言っても仕方あるまいに、そこが酒の上だ。酔えば無暗に喧嘩を吹っかける奴さえあるのだから、五十年前の愚痴なら先ず/\好い酒癖の部類に属する。

「又始まったぜ」

青空文庫の作品カード