野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

錢形の平次は、椽側の日向に座布團を持出して、その上に大胡坐をかくと、女房のお靜は後ろに廻つて、片襷をしたまゝ、月代を剃つて居りました。

八五郎は少し離れて、頬杖を突いて足を投げ出し、お先煙草を立てツ續けに燻して、これも引つきりなしに、無駄の掛け合ひをして居ります。

「お願ひだから八五郎さん、その冗談は止して下さいな。今丁度髯にかゝつてゐるんですもの、吹き出すたびに、危なくて危なくて――」

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