三好 達治

霾

霾

冬の初めの霽れた空に、淺間山が肩を搖すつて哄笑する、ロンロンロン・※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ッハッハ・※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ッハッハ。「俺はしばらく退屈してゐたんだぞ!」そしてひとりで自棄にふざけて、麓の村に石を投げる、氣流に灰を撒き散らす。

山端に出た一人の獵師は、(彼の犬は平氣でさつさと先を急いでゐる)ちやうど彼のふり反つた鼻の先の、落葉松に話しかける。「やつたぜ、また」

高原を走る小さな電車は、折から停車場に尻ごみして、がたがたとポオルを顫はす。「これだから厭だよ、おれはもう厭だよ」そこで發車時間が五分遲れる。

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