佐藤 春夫
オカアサン
その男はまるで仙人のように「神聖なうす汚なさ」を持っていました。指の爪がみんな七八分も延びているのです。それがしきりとわたしに白孔雀の雛を買えとすすめるのですから、わたしはお伽噺みたようなその夜の空気がへんに気に入ってしまったのです。そうしてわたしはつい一言、そんな高価なものを買ってもいいようなことを言ってしまったのです。が、いいあんばいに先方の値とわたしの値とは倍以上も違ったものだから、まるでお話にも何もならずにしまったのです。それでこの話はおじゃんになったのですが、しかし小鳥屋の才取をするこの仙人は、わたしに鳥を売りつけようという考は思いきらなかったものと見えます。一週間ばかりして今度はわたしに鸚鵡を買えとすすめて来たのです。
仙人は初めこの鳥を持って来て、これを紹介しました――十やそこらは完全に口を利く。それの発音は明確で微妙である。その上に何だかわからないが長いこと喋りもする。歌は「ハトポッポ、ハトポッポ」とそれだけしか歌えないけれども、その調子の自然なところが、この鳥の有望なところだ。まだ三歳ぐらいな若鳥だと思うから仕込みさえすれば、童謡の一つぐらいは完全に歌うだろう。この鳥の名は「ロオラ」というのだ……と、そこで「仙人」はわたしのうちの女中にビスケットを買って来させて、それを鳥に見せながら言うのです。
「ロオラや」
すると鸚鵡は体をくねらせてあのまるい大きな嘴を胸の方へ押しつけながら(しなをつくったような形で)