吉川 英治

濞かみ浪人

親の垢

几帳面な藩邸の中に、たった一人、ひどく目障りな男が、この頃、御用部屋にまごまごしている。

彼は、俗にいう、ずんぐりむッくりな体格で、年は廿六、七歳だった。若いくせにいつも襟元がうす汚い。袴の紐もよく締まって居ないと見えて、後下がりに摺ッこけている時が多い。

『オイ、数右衛門』

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