新美 南吉
丘の銅像
丘のふもとの、うつくしい平和な村に、ハンスという、詩人が住んでいました。
丘の上に立って、うつくしい村をながめては、歌にうたい、牧場にいって、やさしいひつじのむれをながめては、詩をかくのがつねでした。ハンスのつくった詩は、国じゅう、だれひとり知らないものはないほどでした。
あるとき王さまは、この村のそばを通りかかりましたが、ハンスがこの村にいると聞いて、わざわざ、この名高い詩人に、あいにこられました。王さまでさえ、そんなに、ハンスをたいせつに思っていられるのですから、村の人たちが、ハンスをうやまったことは、いうまでもありません。そんなわけですから、このハンスが年とって、天国へめされていったときには、村の人たちは相談をして、ハンスをいつまでもわすれないように、銅像をたてることにきめました。
三か月ほどのち、丘の上のにれの木の下には、りっぱなハンスの銅像がたちました。ちょうど、ハンスと同じ高さで、顔から形から、生きてるときの、ハンスそっくりでした。村の人たちは、その銅像を見あげては、生きてたときのハンスが、牧場のさくのそばで、ひつじのむれをいつまでも、じっと見つめているすがたを思い出すのでした。