野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」
ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。鼻毛を抜いて、手の甲に一本ずつ植えて、それを、畳の上でプーッと吹くといった、太くて粗い神経の持主の言葉ですから、この――世の中が悪くなった――と言ったところで、大した真剣味はありません。
「たいそう考えちゃったね。何が一体悪くなったんだ」
野村 胡堂
一
「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」
ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。鼻毛を抜いて、手の甲に一本ずつ植えて、それを、畳の上でプーッと吹くといった、太くて粗い神経の持主の言葉ですから、この――世の中が悪くなった――と言ったところで、大した真剣味はありません。
「たいそう考えちゃったね。何が一体悪くなったんだ」