伊藤 野枝

新らしき女の道

新らしい女は今迄の女の歩み古した足跡を何時までもさがして歩いては行かない。新らしい女には新らしい女の道がある。新らしい女は多くの人々の行止まつた処より更に進んで新らしい道を先導者として行く。

新らしい道は古き道を辿る人々若しくは古き道を行き詰めた人々に未だ知られざる道である。又辿らうとする先導者にも初めての道である。

新らしい道は何処から何処に到る道なのか分らない。従つて未知に伴ふ危険と恐怖がある。

未だ知られざる道の先導者は自己の歩むべき道としてはびこる刺ある茨を切り払つて進まねばならぬ。大いなる巖を切り崩して歩み深山に迷ひ入つて彷徨はねばならぬ。毒虫に刺され、飢え渇し峠を越え断崖を攀ぢ谷を渡り草の根にすがらねばならない。斯くて絶叫祈祷あらゆる苦痛に苦き涙を絞らねばならぬ。

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