新美 南吉
貧乏な少年の話
一
六年生の加藤大作君が、人通りのない道を歩いてくると、キャラメルの箱が一つ落ちていた。
「あれ、キャラメ……」
大作君はかがんでそれをひろおうとした。しかし急にある考えがうかんで、ひろうのをやめた。人に空箱をひろわせてはずかしい思いをさせようという、だれかの意地わるないたずらかも知れない。どこかにかくれてみていて、それを大作君がひろうととたんに「わアい、いいものひろったなア。」とひやかすつもりかも知れない。そういえば、あたりがばかにひっそりしている。このひっそりしているのがくさいのである。