野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、――ちょいと、八五郎親分」

ガラッ八は背筋を擽られるような心持で振り返りました。菊日和の狸穴から、榎坂へ抜けようというところを、後ろからこう艶めかしく呼止められたのです。

「どこだ」

青空文庫の作品カード