野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、変なことがありますよ」

「何が変なんだ。――まだ朝飯も済まないのに、いきなり飛び込んで来て」

五月のよく晴れた朝、差当って急ぎの御用もない銭形平次は、八五郎でも誘って、どこかへ遊びに行こうかといった、太平無事なことを考えている矢先、当の八五郎は少しめかし込んだ恰好で、飛び込んで来たのです。

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