野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

深川の材木問屋春木屋の主人治兵衛が、死んだ女房の追善に、檀那寺なる谷中の清養寺の本堂を修理し、その費用三千両を釣台に載せて、木場から谷中まで送ることになりました。

三千両の小判は三つの千両箱に詰められ、主人治兵衛の手で封印を施し、番頭の源助と鳶頭の辰蔵が宰領で、手代りの人足ども総勢六人、柳橋に掛ったのはちょうど昼時分でした。

「悪い雲が出て来たね、鳶頭、この辺で夕立に降り込められるより、一と思いに伸しちゃどうだろう」

青空文庫の作品カード