野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
師走に入ると、寒くてよく晴れた天気がつづきました。ろくでもない江戸名物の火事と、物盗り騒ぎがしだいに繁くなって、一日一日心せわしく押し詰った暮の二十一日の真夜中。
「おや?」
神田鍋町の呉服屋、翁屋の支配人孫六は、何か物に脅かされるように眼を覚ましました。土蔵の方から、異様な物音が聴えて来たのです。
野村 胡堂
一
師走に入ると、寒くてよく晴れた天気がつづきました。ろくでもない江戸名物の火事と、物盗り騒ぎがしだいに繁くなって、一日一日心せわしく押し詰った暮の二十一日の真夜中。
「おや?」
神田鍋町の呉服屋、翁屋の支配人孫六は、何か物に脅かされるように眼を覚ましました。土蔵の方から、異様な物音が聴えて来たのです。