吉川 英治
剣の四君子
題して剣の四君子という。少し気取り過ぎたきらいがないでもないが、剣の相、花の姿、対照はわるくないと、わたくしには感じられる。
菊の高雅な匂い、春蘭の身を懸崖に置きながらの優しさ。雪を凌ぐ梅花の芳烈。水仙の沈潜と謙虚な冷徹。どれも剣の精進と似通わぬはない。
剣に仕えた古人の行道ほど、きびしい道はなかった。妄想を憎むこと※[#「にんべん+丸」、7-6]の如く、懶惰と嬌慢をつつしむこと敵国を視るようだった。ひたぶるに勝たんとした。が、勝っても勝っても、唯の強さだけでは、なお甘んじられぬものだった。真の剣人とは、
おのれに勝つ