菊池 寛
風雲児、坂本竜馬
現存する坂本龍馬の写真を見ると、蓬頭垢衣、如何にも風采あがらぬ浪士と云つた格好である。浜本浩に少し苦味を加へたやうな顔だ。
その近親の談話によると、龍馬が常用してゐた黒羽二重の紋服は、いつも膝の下一寸ばかりのところが、ピカ/\油染みて光つてゐたと云ふ。
鼻をこすつて、何かと云ふと得意がる癖があつたと云ふ。一日五度も六度もこれをやつた。
酒は大酒とは云へず寧ろ喰意地の方がきたなかつた。クチヤ/\と口に唾をため、よく乾昆布などを噛んでゐた。
菊池 寛
現存する坂本龍馬の写真を見ると、蓬頭垢衣、如何にも風采あがらぬ浪士と云つた格好である。浜本浩に少し苦味を加へたやうな顔だ。
その近親の談話によると、龍馬が常用してゐた黒羽二重の紋服は、いつも膝の下一寸ばかりのところが、ピカ/\油染みて光つてゐたと云ふ。
鼻をこすつて、何かと云ふと得意がる癖があつたと云ふ。一日五度も六度もこれをやつた。
酒は大酒とは云へず寧ろ喰意地の方がきたなかつた。クチヤ/\と口に唾をため、よく乾昆布などを噛んでゐた。