伊藤 左千夫

新万葉物語

からからに乾いて巻き縮れた、欅の落葉や榎の落葉や杉の枯葉も交った、ごみくたの類が、家のめぐり庭の隅々の、ここにもかしこにも一団ずつ屯をなしている。

まともに風の吹払った庭の右手には、砂目の紋様が面白く、塵一つなくきれいだ。つい今しがたまで背戸山の森は木枯に鳴っていたのである。はげしく吹廻した風の跡が、物の形にありありと残っているだけ、今の静かなさまがいっそう静かに思いなされる。

膚を切るように風が寒く、それに埃の立ちようもひどかったから、どこの家でもみな雨戸を細目にして籠っていた。籠りに馴れた人達は、風のやんだにも心づかないものか、まだ夕日は庭の片隅にさしてるのに、戸もあけずにいる。

軒に立掛けた、丸太や小枯竹が倒れてる。干葉の縄が切れて干葉が散らばってる。蓆切れが飛び散っている。そんな光景の中に、萱葺屋根には、ところどころに何か立枯れの草が立ってる。細目な雨戸の間から、反古張の障子がわずかに見えてる。真黒に煤けた軒から、薄い薄いささやかな煙が、見えるか見えないかに流れ出ている。

青空文庫の作品カード