木暮 理太郎
二、三の山名について
この一篇は昭和三年六月十日、霧の旅会創立第十周年紀念大会の席上で述べた話の原稿を纏めて、改訂増補したものであるが、もとより未定稿であって、ほんの一寸した思い付を述べたに過ぎない、謂わば夢物語に似たようなものであるから、予め左様御承知を願って置きたい。尚お南洋系語は主として文学博士坪井九馬三氏の『倭人考』に拠り、仏蘭西極東学校出版の『チアム仏語辞典』『マレイ英語辞典』『馬日辞典』等を参照した。又アイヌ語はバチェラー氏の『アイヌ語辞典』に拠ったものである。其他に朝鮮総督府編の『朝鮮語辞典』、ルザック出版、東洋宗教叢書中の『印度神話』、ジャンネラー・ド・ベールスキー氏の『アングコル』『太洋洲諸島民族志』等をも参酌した。
我国の山名に就て考えるならば、先ず(一)形によるもの(槍ヶ岳、乗鞍岳、笠ヶ岳、荒船山、鶏冠山等)、(二)形以外の見かけによるもの(赤岳、黒岳、白崩山、黒髪山、青薙山、毛無山等)、などから、(三)地名に基くもの(武甲山、刈田岳、鹿留山、小野子山、筑波山)、(四)沢の名を冠するもの(赤石岳、荒川岳、聖岳、上河内岳等其例頗る多い)、(五)雪に因めるもの(白山、白峰、農鳥岳、爺岳、蝶ヶ岳、地紙山、三之字山等)、(六)神仏に関係あるもの(御岳、神座山、神奈備山、薬師岳、蔵王山、地蔵岳等)、(七)岩石、湖沼、温泉等に縁あるもの(六石山、七石山、湯殿山、八海山、沼尻山、苗場山等)、(八)方位によるもの(東岳、西岳、間ノ岳、中ノ岳、前岳等)などに至るまで、幾つかに分類することを得るのであるが、特殊のものが無くもない。例せば西湖の北方に連亙せる御坂山塊の節刀岳は、大将軍にも刀にも少しの